読書するアザラシ

アザラシの読書録 

アザラシ、夏目漱石の『三四郎』を大いに語る。(その1)

おいっす! 

 

読書するアザラシだ!!

 

今日はこのブログの趣旨である読書録の記事だ!!

 

何を読んだかというと、これ!

 

三四郎 (集英社文庫)

三四郎 (集英社文庫)

 

 

夏目漱石の『三四郎』!! 

 

中学生が夏休みに読まされるような奴だ!!

アザラシは中学生でもなんでもないが、

なぜ今さら三四郎なのか…?

 

特に意味はない!!!

ただ目に付いたから読んだだけ!

 

だが目に付いた自分を褒めたい!!

 

これ、かなり面白い!

 

漱石、やるなって感じ!

 

以下はネタバレ満載なのでご注意!

 

 

あらすじはものすごーく簡単言っちゃうと

大学生になったウブな三四郎が福岡から上京して都会に揉まれる。

って感じだ!!

 

あとなんかおもしろい相関図を見つけたのでリンクを貼っておこう!

www.asahi.com

 

このページの相関図はまさに今風のブコメだ!!

そう三四郎はラブコメなのだ!!

 

そもそも冒頭からしてそうだ!!

 

行きずりの若い女宿で一緒の部屋をとっちゃったり、

しかもその女性は三四郎が風呂に入っていると背中を流しに来たり

その上なんかのトラブルで布団は一枚しか用意されないという…!!

 

そんなテンプレラブコメみたいな展開が起きるのだ!!

おい漱石、いきなりラッキースケベが過ぎるだろう!!と言いたくなる!

 

が、なんてことない。

三四郎は徹底的にスカすのだ!!

背中を流しにきたら、光速で湯を上がり

布団が一枚しかなかったら、タオルを代用にして蚊帳の隅っこで寝る。

草食系男子か?と思うほどの対応である。

 

もちろん三四郎は草を食って生きているわけではない!!

ちゃんとモンモンとしている!!

モンモンとしながらもがっつかない!!

それが小川三四郎だ!!

三四郎のこの性格は最後までずっと変わらない。

そしてこの女性に対する免疫のなさが物語のキーともなる。

 

三四郎』の物語には大まかに言って二つの筋がある!

一つは言うまでもなく小川三四郎くんの恋模様!

もう一つが、広田先生をよいしょする運動!

 

上のサイトの相関図を見てくれれば分かるかもしれないけど、

広田先生というのは高等学校の英語教師で、三四郎の級友である与次郎の師でもある!

その広田先生を大学教授にしよう!という運動が与次郎主導の下で繰り広げられていくのだ!

 

この運動を眺めながら三四郎くんは都会で生きるということを知っていく。

もっと言えば『智』で生きることの難しさを学ぶことになる。

その一方、恋模様では『情』の複雑さに触れることになるってわけ!

こう見ると理性と感性の両面から三四郎を叩き上げていこうという意図を感じる。

そしてどちらの筋でも最終的にぶつかるのは『世間』だ。

だから個人と社会との軋みをどう捉えるか、というのがこの『三四郎』やその他の漱石著作を読むときに念頭に置くべきことなのかもしれない。

 

が、そんなことはどうだっていい!!!

 

誰がなんと言おうが『三四郎』はラブコメなのだ!!

しかも三角関係もの!

 

問題は誰と誰の三角関係か?ってとこだろう。

もちろん一人は決まっている。

小川三四郎くんである。

この純朴童貞が居ないと物語が始まらない。

 

じゃあもうひとりは?ってなるとまあ、あの女しか居まい。

そう、里見美禰子さん!

上の相関図でもメインヒロイン風に書かれている!!

二重まぶたで切れ長な目じりを持つ女だ!

要はちょー美人!

それこそ絵のモデルになるくらい!

 

さて、となれば最後の一人は誰か?

 

ふつーに読めば野々宮宗八さんだろう。

上の相関図でも美禰子と双方に好意?なる線が引かれている…!

 

まず美禰子の好意については次のシーンからも察することが出来る!

 

「里見さん」
 だしぬけにだれか大きな声で呼んだ者がある。

 美禰子も三四郎も等しく顔を向け直した。事務室と書いた入口を一間ばかり離れて、原口さんが立っている。原口さんのうしろに、少し重なり合って、野々宮さんが立っている。美禰子は呼ばれた原口よりは、原口より遠くの野々宮を見た。見るやいなや、二、三歩あともどりをして三四郎のそばへ来た。人に目立たぬくらいに、自分の口を三四郎の耳へ近寄せた。そうして何かささやいた。三四郎には何を言ったのか、少しもわからない。聞き直そうとするうちに、美禰子は二人の方へ引き返していった。もう挨拶あいさつをしている。野々宮は三四郎に向かって、
「妙なつれと来ましたね」と言った。三四郎が何か答えようとするうちに、美禰子が、
「似合うでしょう」と言った。野々宮さんはなんとも言わなかった

 

三四郎』:夏目漱石*1

 

 

これは明らかに野々宮さんに対するあてつけ!

 

あと周囲から見ても美禰子の野々宮さんに対する好意は筒抜けで、三四郎も終始気にしている関係性でもある。

 その代りよし子が美禰子の家へ同居してしまった。この兄妹きょうだいは絶えず往来していないと治まらないようにできあがっている。絶えず往来しているうちには野々宮さんと美禰子との関係も次第次第に移ってくる。すると野々宮さんがまたいつなんどき下宿生活を永久にやめる時機がこないともかぎらない。

 

三四郎』:夏目漱石 

 

それにおそらくだけど作中以前の段階で野々宮さんと美禰子の間には何かしらのアレがあったのだろう…。

 男はやがて行き過ぎた。その後影を見送りながら、三四郎は、
「広田先生や野々宮さんはさぞあとでぼくらを捜したでしょう」とはじめて気がついたように言った。美禰子はむしろ冷やかである。
「なに大丈夫よ。大きな迷子ですもの」
「迷子だから捜したでしょう」と三四郎はやはり前説を主張した。すると美禰子は、なお冷やかな調子で、
「責任をのがれたがる人だから、ちょうどいいでしょう」
「だれが? 広田先生がですか」
 美禰子は答えなかった。
「野々宮さんがですか」
 美禰子はやっぱり答えなかった。

 

三四郎』:夏目漱石

 

これは菊人形の見世物の喧騒から二人で逃れたときのシーンだ。

この前のシーンで迷子を見つけても手助けなかった野々宮さんに対してのあてつけかもしれない。しかしそれでも『責任をのがれたがる人』というのはなかなか意味深な言葉である…。

 

で、つぎに野々宮さんは美禰子をどう思っているのか…?

実はウィキペディアのあらすじには

三四郎と宗八は失恋したのだ。』*2と書いてある。

となれば野々宮さんは美禰子に恋していたわけだが…

 

ここで冒頭の方の描写を少し引用しよう!

 

三四郎の頭の中に、女の結んでいたリボンの色が映った。そのリボンの色も質も、たしかに野々宮君が兼安かねやすで買ったものと同じであると考え出した時、三四郎は急に足が重くなった。

 

三四郎』:夏目漱石

 

このシーンは三四郎が病院で偶然美禰子に出会ったときのことだ!

そのときに美禰子のしていたリボンがどうも野々宮さんが買ったものと同じらしい。

 

贈り物をすることが恋してることの証左になるならことは至極簡単だが…

 

こんなシーンもあるわけで

 

「ああ、わたし忘れていた。美禰子さんのお言伝ことづてがあってよ」
「そうか」
「うれしいでしょう。うれしくなくって?」
 野々宮さんはかゆいような顔をした。そうして、三四郎の方を向いた。
「ぼくの妹はばかですね」と言った。三四郎はしかたなしに、ただ笑っていた。
「ばかじゃないわ。ねえ、小川さん」
 三四郎はまた笑っていた。腹の中ではもう笑うのがいやになった。
「美禰子さんがね、兄さんに文芸協会の演芸会に連れて行ってちょうだいって」
「里見さんといっしょに行ったらよかろう」
「御用があるんですって」
「お前も行くのか」
「むろんだわ」

 

三四郎』:夏目漱石

 

ここでは三四郎のちょっとした嫉妬心も見物だけど、

野々宮さんの『かゆいような顔』もまた面白いものがある。

この反応を妹に図星を付かれた照れ隠しと見るか、

それとも勘違いに対するただの呆れと見るか…。

ここらへんの解釈は少し難しい。

 

けど正直、解脱系男子である野々宮さんが照れ隠しをするわけがないと思う。

野々宮さんは世間から離れて光線の圧力を大学で研究している人物だ。所帯を持つとか恋をするとかそういうところからかなり遠いところに居る。

この『三四郎』の中でいうと広田先生に近いポジションだ。つまり『』を探求する人種だと思う。『』に揺れ動くような世界の住人じゃない。作中でよく言われるように「のん気」な人間なのだ。

 

「昨夜、そこに轢死があったそうですね」と言う。停車場か何かで聞いたものらしい。三四郎は自分の経験を残らず話した。
「それは珍しい。めったに会えないことだ。ぼくも家におればよかった。死骸はもう片づけたろうな。行っても見られないだろうな」
「もうだめでしょう」と一口答えたが、野々宮君ののん気なのには驚いた。三四郎はこの無神経をまったく夜と昼の差別から起こるものと断定した。光線の圧力を試験する人の性癖が、こういう場合にも、同じ態度で表われてくるのだとはまるで気がつかなかった。年が若いからだろう。

 

三四郎』:夏目漱石

 

そんな彼が美禰子に恋をし、あまつさえ照れ隠しなどするだろうか?

 

さて野々宮さんの美禰子に対する好意は曖昧だけど、とりあえず美禰子の野々宮さんに対する好意はかな~りはっきりしている!

 

そう好意の矢印こんな感じになるわけ!

 

三四郎⇒美禰子⇒野々宮さん

 

…。

こうなると三角関係というより一方通行だ…!

片思いと勘違いはラブコメの基本事項だが、これだとなんだか物足りない…!!

 

友人と同じ人に恋をしててんやわんやするというやつこそが三角関係ラブコメであり王道である!!

 

なのでここに一説をぶちたてよう!!

 

よし子、三四郎に恋をしていた説だ!!!

 

……。

よし子って誰…?

そうなってるかもしれないが上の方でリンクを貼った相関図を見てほしい…!

野々宮さんの妹のことだ!!

そして美禰子の友人でもある…!!

いいポジションだ!!

 

三角関係ラブコメに参入する資格は十分にある…!!

 

そしてもしこの説が立証できれば三四郎』最大の謎に光をともすことが出来るかもしれない…!!

 

次回はこの説を検証していこう!

 

 (ω・ミэ )Э